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大阪府私立校拠点施設

認識力と組織力を総動員し僅差の戦いを制す。 類設計室 調査企画房 橋本 宏

プロポーザル連勝に急ブレーキ

’13年の春、学校法人の新学部校舎の設計プロポーザルが実施され、類設計室も参加者に選ばれました。近年、コンペやプロポーザルで設計者を選定するプロジェクトが主流となっており、今やプロポーザルが組織の命運を分けます。このプロポーザルに勝つため、万全な体制で臨みました。

クライアントに同化するためには、情報が生命線です。営業担当は関係人脈からの情報を網羅し、企画担当はクライアントを取り巻く社会状況を調査しました。調べ得るすべての情報を収集し、プロポーザルチームで何十回・何百回も検討を繰り返しました。1本の線、1文字まで追求を重ね、全ての力を振り絞り、提案書を作り上げました。

社内ミーティング

ところが、結果は2位で敗北。ここ数回、渾身の提案書をつくったにも関わらず、敗北が続いていました。「これまで通りではうまくいかない」無念の想いを噛み締めると同時に、設計室全体に危機感が募っていました。

プロポーザル高度化チームを結成

そのような中、大阪府私立校拠点施設のプロポーザルの提出が1ヶ月後に控えていました。日本屈指の教育施設の実績を持つ類設計室にとって、集大成となる案件です。

「次は、絶対に負けるわけにはいかない」誰もがそう思い、事務所内には緊迫感が漂いました。いち早くプロポーザル敗北の原因分析と突破方針が必要でした。営業担当・企画担当・計画担当が中心となり、直ちにプロポーザル高度化チームを結成、私もその一員として加わりました。

社内ミーティング

これまでの枠をすべて取っ払う

「僅差の闘いの中で、どこで勝敗が決するのか?」何度も分析を重ねました。過去5年にわたるプロポーザルの戦績と原因、メディアで掲載される他社の提案書や業者選定の経緯をすべて洗い出したのです。

追求の結果、クライアント内部の合意形成の方法が、ここ数年で大きく変化していることが分かってきました。

数年前までは、合意形成上、経営者層が大きな決定力を持っていました。しかし、大震災以降、激動する社会が、組織の経営基盤を揺るがしています。先行きの見えない社会を切り抜けるため、経営者から担当者まで危機感・突破方針を共有し、得心できる合意形成体制へと変わってきていたのです。建設事業という一大事業のパートナーを決めるためには、なおさら慎重を期すに違いありません。

模型ミーティング

プロポーザルの提案で今まで以上に求められるようになったのは、プロジェクトに関わるすべての人が可能性を感じられ、心を動かされるようなコンセプト。一部の人に向けたものでは片手落ちです。より普遍的な提案書が求められるようになっていたのです。
この変化に適応するためには、提案書を少し改良すれば済むものではなく、私たちの意識・姿勢そのものを変える必要がありました。これまでの枠を全て取っ払い、ゼロから考え直す覚悟が求められていました。

『社内ネット』は、“認識闘争”の場

原因と突破方針が少しずつ明らかになってきました。しかし同時に、提出までの時間も迫っていました。突破方針から具体的な方法を導くためには、あらゆる経験・認識を結集する必要があります。そこですぐさま、連勝を続ける東京事務所へ向かい、設計室長や計画チームと議論を重ねました。

誰もが納得できる普遍的な提案書を作るためには、徹底的に論理整合性を突き詰める必要があり、そのためには認識勉強会で実践している「図解化」が適していることが分かりました。さらに、この図解化を、最大の共認形成の場である『社内ネット』に投稿し、文字通り360度の視点から検証することができれば、誰もが納得できる提案書を作ることができます。

「勝ち筋が見えてきた!」私たちは、一気に動き出しました。チームの総力を結集し、客先与件と敷地条件を読み解き、その日のうちに提案書の骨子を『社内ネット』へ投稿しました。

数日間、みんなの評価を仰ぎ続け、何度もコンセプトを塗り重ねていきました。勝つためには、遠慮や妥協は一切ありません。提案内容が良ければみんなの評価が集まり、悪ければ指摘が入ります。『社内ネット』は、全社の評価圧力や期待圧力が集まる「闘争の場」です。勝ちたい想いと熱意が全社で共認され、チームのさらなる活力・集中力へと還元されていきました。

全社の力を結集した“総力戦”

また、勝つという目的意識の元では、全員が当事者です。提案の骨子が決まると、事業部の枠に関係なく、部門を超えて様々なアイデアが集まってきました。

対象建物は賃貸オフィスやレンタル会議室を持つ施設だったことから、地所事業部と協働して収益計画にまで踏み込んだ提案を行いました。さらに、その議論の中から斬新なアイデアも生まれました。類グループが所有するビルを活用した移転計画によって、最も安価で機能的な計画が実現できたのです。可能性が少しでも見えればすぐに提案書を塗り替え、提案内容はどんどん進化していきました。

同時にコンセプトをもう一段深く掘り下げるため、私立学校が置かれている最新状況について、類塾の講師とも議論を重ねました。

そして提出の1日前、提案書は完成しました。提案内容の大半を占めたのは、施設が持つ社会的な役割を土台としたコンセプトと、相手の状況に徹底的に同化した事業推進の枠組みでした。提案の骨子を明確にするため、建築計画の提案はあえて控えたものとしました。今までとは全く異なる提案書へと進化したのです。

今までにない勝利の充足感と手ごたえ

いよいよ提案書の提出日。大胆な提案書の改良には、充実感と同時に、不安も交じっていました。関わってくれたメンバー一人ひとりの顔を思い浮かべ、気持ちを落ち着かせてから提出に臨みました。

クライアントに提案趣旨を説明しはじめると、相手から笑顔がどんどん溢れ、とても得心度の高いプレゼンとなりました。クライアント自身が勝ち筋・可能性をとらえた瞬間と言えます。一瞬にして不安が吹き飛びました。

そして提出から数日後、「当選が確定!」との連絡が入りました。今までにない総力戦での勝利に、事務所全体が充足と勝ちのムードに包まれました。すぐさま『社内ネット』に「波がきましたね!」「プロポ勝利の新しい流れ」「組織が分厚くなってく」と勝利を喜ぶ声が多数投稿されました。

クライアントからは、「類さんはとことん応えてくれるんですね。本当に信頼しています」という言葉を頂くことができました。この言葉を聞き、これまでと違う手ごたえを感じています。

  • 類設計室 調査企画房 橋本 宏 2007年: 入社、意匠設計 内部系に配属 2009年: 環境設備房に配属 2011年調査企画房に配属、現在に至る