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東戸塚 上品濃地区・西口駅前プロジェクト

段階的に魅力を高める、約20年に渡るまちづくり 類設計室 ディレクター 斎藤裕一

広大な「本物の自然」との出会い

年輪を刻んだ大木や数々の花、森に息づくたくさんの動物や鳥、虫・・・。ディレクターの斎藤は、初めてこの地を訪れたとき、年月をかけてつくられた本物の自然に魅了されました。人工的な自然ではなく、文字通りの自然。
 敷地はバブルの崩壊によって研究施設用地としての開発計画が中断し、インフラの整備も途中段階で止まってしまっていた土地でした。もともとの事業計画は暗礁に乗り上げ、有効活用のアイデアが強く求められていました。
 自然とふれあえる機会の少ない首都圏で、本物の自然とともに成熟するまちづくりができれば、かけがえのない宝になる。絶対にこの場でしかできないまちづくりを実現させる。斎藤は強く決意しました。

地域と一体となり、地区計画変更を実現

もともと東戸塚は、駅の東側を中心に、地元事業者と地域が一体となって民間主導でまちづくりを行ってきた地域でした。しかし当時は、人口急増に対する抑制政策が採られており、研究・業務施設としての地区計画を、住宅建設が可能な地区計画に変更するのは、不可能とも言えるほどの難課題でした。
 類設計室は、まちづくり協議会やコンサルと一体となって、小中学校の学級数などに基づく人口密度などにまで踏み込んで、数年にわたる検討を重ねました。そして、ついに保存林を護るための仕組みづくりを含む、住宅と医療・福祉施設を建設するための地区計画変更を実現しました。

まちのコンセプトは「人と自然」「人と人」の絆の再生。自然とふれあいながら、多世代が生涯にわたって安心して暮らせるまち。高齢化社会の到来も想定し、まちの住環境の質を高めるために病院・福祉施設を含む計画としました。
 その後も事業パートナー探しなどに奔走し、実現の基盤を着実に整えていきました。

「人と自然」「人と人」の絆の再生

具体的な施設計画に入ってからも、コンセプトの実現を徹底して追求しました。
「人と自然」の絆を再生するため、森を最大限に保存する配置計画とし、フォートンヒルズ(マンション)の緑地率はじつに65%、約25,600㎡の保存林と約15,000㎡の緑地を実現。さらには、事業主と一体となって森の生物調査を実施し、入居者による森の管理方法なども具体化していきました。生物調査では、1000種にも及ぶ生物が確認され、中には希少な生物も多く含まれていました。
 ふれあい東戸塚ホスピタルやシニアホテルでも、森を一望できる展望室や森に臨む病室など、自然の力を治療に活かす施設計画としています。

「人と人」の絆の再生では、充実した共用施設やイベントに使えるコミュニティ広場などの計画に加え、当時としてはめずらしく、入居前からコミュニティ形成のための交流会やサークル活動を開始しました。類設計室も、設計業務を超えてコミュニティ形成に協力し、2007年には、このような取り組みが評価され、不動産学会業績賞を受賞しています。
 また、地域のみんなが安心して暮らせるまちとするため、フォートンヒルズの中には、ふれあい東戸塚ホスピタルと提携したメディカルルームを計画し、まち全体として有機的に魅力を高める計画となっています。
 以上のような計画が具現化された設計が完了し、着工するまでには、最初に敷地を訪れてから約5年の歳月が流れていました。

駅前の景観・利便性を向上し、活気を生み出す

フォートンヒルズなどが完成し、活気付く東戸塚西口のまち。一方で、1980年に整備された西口駅前は、ロータリーが狭く、駐輪場が足りないなど、機能不全が徐々に顕在化してきました。そのような中、駅前の民間敷地の改築計画が立ち上がりました。しかし、西口駅前にも高さ制限などの地区計画がかかっていたことに加え、難しい敷地形状から、広場を広げることはもちろん、事業計画自体も危ぶまれる状況でした。

危機的状況を受け、まちづくり協議会への参加や活動協力などでまちに関わり続けてきた類設計室に相談が持ち込まれました。類設計室は、地区計画の意図・背景に基づいて計画することで高さ制限を突破するとともに、効率的な建築計画により、広場を拡張させる計画を立案しました。合わせて駐輪場などの地域貢献施設や防犯設備も整備し、西口駅前広場の整備を、民間主導で行政も巻き込んで実現することに成功したのです。

 現在、拡張された西口広場は、低層部の商業施設がまちににぎわいをもたらすとともに、週末には広場でイベントが開催され、さらに活気を増しています。

次代を担う若者を育成する拠点へ

2015年4月、シニアホテル東戸塚の隣に、湘南医療大学が開学しました。2025年には団塊の世代がすべて75歳以上となり、急激に高齢者が増加するため、医療従事者の育成は社会的に大きな課題となっています。特に首都圏では、医療従事者の深刻な不足が予測されています。地域を超えて、この社会的な課題に応えるため、東戸塚のまちはさらなる成長を遂げます。

また、若い大学生が来ることで、まちに集う人は多様性を増します。学園祭などでは、地域に学校を開放する予定になっており、地域の魅力はさらに高まります。

地域のパートナーとして

 類設計室は、単発の再開発事業だけではなく、多数の関係者とともに、長年にわたって地域のパートナーとしてまちづくりをサポートしてきました。東戸塚のまちづくりに関わり始めて、すでに20年が経過していますが、年を追うごとにまちは活気を増しています。

 フォートンヒルズの共用施設や広場は、変わらず盛況です。週末は予約で埋まるなど、さまざまな交流活動が行われており、確かなコミュニティが根付いています。西口駅前広場でも、入居企業や市民団体等によるさまざまな活動が活発に行われています。

 2015 年には大学も開学し、さらに魅力的なまちとして成長していくことを確信しています。今後も、東戸塚のまちの発展を、地域のパートナーとして見守っていきます。

  • 類設計室 ディレクター 斎藤 裕一 1986年:入社、第14設計室に配属 1992年:ディレクターに配属、現在に至る