Story13 大田区産業プラザ「PiO」

大田区産業プラザ「PiO」

メインタイトル

3000以上もの中小企業工場が集積する街、大田区。金属加工の高度な基盤技術は、日本のメカトロニクス産業の屋台骨となり、先端的な技術開発を支えています。その「技術の高度化と次代への継承」を目的に、産業活性化拠点として計画。熟練工が材料に生命を吹き込むように、「金属」という素材に可能な限りディテールを施し、陰影豊かなデザインとすることでCRAFT(工芸品)の域にまで高めることを目指しました。

市場の賑わいを継承した産業活性化拠点

計画地はかつて青果卸市場があった土地。ヒト・モノ・技術・情報が行き交う「市場の賑わい」を産業活性化につなげたいと考えました。施設は産業支援のための展示、会議、経営・技術支援、相談・交流機能、都営住宅の複合機能で構成されています。トップライトから柔らかな自然光が降り注ぐ5層吹抜けのアトリウムは共用のアプローチ空間(メインストリート)。各機能を「街並み」のように有機的に配置し、産業の交流空間となることを意図しました。竣工から20年以上経った現在も高い利用率を維持しており、多くの関係者に親しまれる「産業技術の市場」としての役割を果たしています。

街並み、全体像:鳥瞰写真

スーパーフレームを主体とした
大スパン架構

長手方向は、5階をトラス階(=スーパー梁)とし、2~4階の鉛直荷重を吊床形式によって支持しています。また、梁が取り付く柱の構面にはブレースを配置(=スーパー柱)することで、フレームを形成し、建物の耐力・剛性を高めました。(左下、図)
2つの空間をつなぐアトリウムは、トップおよびハイサイドガラスで囲まれ広がりを持たせた吹抜け空間としています。(左上、写真)これを支える架構も薄肉トラス、ラチス材を主に構成し、全体的に軽快な骨組みとしました。 スーパーフレーム架構により、浮遊感を感じさせるダイナミックな形態を実現し、構造とデザインを融合した外観デザインとしています。

エントランス吹抜け写真 産業棟スーパーフレーム軸組図
立面詳細写真・床時計・手描き外観スケッチ

ものづくりディテールへのこだわり

「金属」という素材は、通常は平滑(つるつる)、均質な工業材料だが、私たちの技術・エネルギーを素材に注ぎ込むことで、陰影豊かな表情をつくりだし、ディテールを工夫することで、「CRAFT」の域に高めたいと考えました。
 まだ図面が手描きだった当時、何度も修正を繰り返しながら精緻なディテールを追求していきました。(右下、図)
 最終的に構造体の鉄(スチール)に、壁面は加工されたアルミパネル、他にもステンレス、鋳造など、さまざまな金属を「CRAFT」として組み合わせました。
 ダイナミックさと細やかさを兼ね備える金属のCRAFT、自然光が差し込むと時間とともに、陰影、表情が変化するファサードに、ものづくりの魂を込めたいと願いました。
 外観はアルミパネル、アルミダイキャストを基本とし、スーパーフレームの力の流れを視覚化したメカニカルな構成の中に、サッシュ周りの工芸品のような繊細なディテールを融合させ、金属加工の街のシンボルとして存在感を放っています。(右下、写真)

展示ホールイベント写真 「施設構成アクソメ図」メインストリートを中心に各機能を「街並み」のように配置

地域と共に歩む産業活性化拠点

 完成から22年を経て、施設はますます大田区の産業活性化拠点として発展し続けています。
 平成28年度の利用率は、ホールが80.1%、会議室が78.8%で、非常に高い利用率を維持し続け、年間の利用者数は80万人を突破しました。
 大小展示ホール、コンベンションホール、会議室、コワーキングスペース、レストランなど、フレキシブルかつ充実した施設構成により、中小企業工場だけでなく、地元商店やサービス業など、広く産業者を支援する施設として様々な活動やイベントを支えています。(左上、図)
 また、利用者が施設をより使いやすくなるよう、時代に合わせて貸出し備品を更新、工夫したり、コワーキングスペースを設けるなど、利用者に向き合った施設運営者の活動が施設の利用率の高さの要因となっています。