弊社東京本社の共創拠点「Root」にて「共創シンポジウム~森を育み、活かす、これからの木造建築~」を開催しました(後編)
弊社東京本社の共創拠点「ROOT」にて2025年12月5日(金)、「共創シンポジウム~森を育み、活かす、こらからの木造建築~」を開催しました。設計事業部の社員と木造建築に関係するさまざまな分野の方々にお集まりいただき、第一部と第二部に分けて、弊社の奈良と神奈川の事例を取り上げ、木造建築の在り方と未来についてクロストークを行っていただきました(第一部の概要は2025年12月26日に公開しています)。今回、第二部の概要を後編として公開します。
第二部「中大規模木造の木材活用と知恵」
第二部では2022年に竣工した「神奈川県松田町立松田小学校」について取り上げました。「松田と共に育つ新しい学びの樹」をコンセプトに、全国3例目となる木造3階建て1時間準耐火構造の小学校として計画されました。

第二部は、多田奨 弊社設計事業部監理部課長、宮越久志 株式会社中東専務取締役、前田力 ナイス株式会社理事・日本WOOD.ALC協会理事に登壇していただきました(第一部登壇の杉本洋文 株式会社計画・環境建築代表取締役会長、森本達郎 森庄銘木産業株式会社専務も発言されています)。ご経歴は後述しています。以下、弊社側は敬称略、その他の皆様の敬称は「氏」で統一させていただきます。

松田小学校のプロジェクトについて
多田 神奈川県西部は丹沢山で有名ですが、そこから南に行ったあたりに松田町はあります。そこに敷地面積約1万1000 ㎡、延床面積約6300㎡の学校を建てさせていただきました。施工の前田建設工業、地元の関野建設さん、杉本先生の計画・環境建築、類設計室 の4 社が JV で設計施工一体になって、デザインビルドとして取り組んだプロジェクトです。
校舎の構造モデルとしては、真ん中にあるのが RCコア棟で、法的に言うと「壁等」。木三学(=もくさんがく、木造三階建ての学校舎)の壁等で、延焼防止するものになります。
木造西棟と木造東棟、北側にRC体育館等があり、木造西棟に普通教室が 1 階から 3 階まで全部入ってます。木造東棟に、職員室や特別教室が入っています。3 階にはメディアセンターがあります。特徴的なのが普通教室です。松田小学校は一学年 3 クラスあり、一学年の教室は自由に行き来できる形にしました。一体的な授業や教え合い、学び合いといった、これからの授業に対応できる教室として設えています。
メディアセンターに繋がる学びの階段は、本件の一番特徴的な空間です。木三学だと天井を不燃化しなさいっていう法文がありますが、最上階にはかかりません。これはちょうど 3 階にありますので、メディアセンターは V の字の木(もく)天井にしました。両サイドにあるハイサイド窓から光が入り、V の字の天井に反射して柔らかな光が降り注ぐというような空間を作りました。木には光を拡散させる効果があり、柔らかい光が降り注ぐ大変居心地のいい図書館になってます。
木造学校のスタンダードモデルを目指した~標準化設計~
多田 松田小学校は平成 27 年の建築基準法改正で可能になった、準耐火構造、いわゆる1 時間準耐火の学校です。我々はこのプロジェクトに関わる時に、全国で 3 例目の設計だと言われ、木造学校を全国に広めるチャンスだというふうに考えました。後からついてきてくださる方のために、我々の試行錯誤と同じようなことを繰り返さなくてもいいように、真似ていただけるようなものを造ろうということを考えて進めました。

多田 普及することを考えた時に、全国のどこでも誰でも造れる設計、「標準化設計」を目標にしました。取り組んだ内容としては「尺モジュール」です。
中大規模木造の中でも、学校の教室はひと部屋が大きいんですよね。70 ㎡ぐらいある。で、これを無柱空間にしなきゃいけないっていうのが学校建築の特徴だと思います。松田小学校では、教室の両側面の真ん中に柱を立てて、その間には梁として集成材をかけ渡し 、9.1m スパンを飛ばしました。
全国誰でも造れる、どこでも入手できるといった時に、接合金物も既製品を徹底的に使おうと取り組みました。また、本件は在来軸組工法、いわゆる一般の住宅と同じ工法です。全国の大工さんが、住宅の延長線上として造っていただけるんじゃないかということで採用しました。
宮越氏 (尺モジュールの採用は)設計段階にもご相談をいただきました。1 m ピッチがいいのか、それとも910mmピッチがいいのか。ただ、のちの 2 次部材や大等級合板を考えた時に、910mmモジュールがやっぱりいいんじゃないかと。それと、製材品はメーターモジュールでの材料が多い。それを切って小口を加工するとどうしても短くなるので、910mmモジュールであれば、メーター材を加工するとちょうどいいスパンになる。今の910mmモジュールがいいんじゃないかということで、我々からも提案させていただきました。
一方で、この面積の量の木材を集めて加工することは納期的に非常にタイトなスケジュールでした。全てを神奈川県産材にできれば良かったんですが、強度の問題で他地域の材料で作らざるを得ませんでした。コストと納期を優先するということだったので、2次部材はなるべく既製品を採用しながら提案させていただきました。

コスト課題について
多田 松田小学校はコストの問題もあってオール国産材というわけではなかったです。国産材と外国産材の価格差は今現在、昔よりも開いているのかどうか。今後の基調も含めてお聞きしたいと思います。
前田氏 縮まってると言った方がいいのかもしれないです。今後の見通し次第だと思いますが、日本円があまりにも弱くなってしまいましたので、外国産材は最も高い時に比べて価格が倍になっている。北米はもう日本のマーケットを見なくなっているという状況があります。ウッドショックの影響から、外国産材が国産材の2倍になったという話もありますが、それ以上に(日本の)買う力がなくなってきている。いい意味ではないんですが、価格差は縮まってくるのではないかなと思います。

杉本氏 昔、米マツも圧倒的に良かったけど、今はもう、国産のカラマツを使い始めてるのも、値段が拮抗してきたから使えるようになっているわけですよね。松田小学校は完成する頃にウッドショックにあいました。それで、シハチ板でつくろうとしていた建具が、サブロク板でしかつくれないと言われました。目地をデザインして、サブロク板で框扉(かまちとびら)みたいに見えるよう設計しました。結果はそれで良かったなと思いましたが、そういう 、1 枚でつくれたものができないという状況が起きました。
宮越氏 一方で、住宅関係に使う欧州アカマツが非常に安く入ってきて、今はもうこの価格が構造材のベースになっています。国産材も本当はもっと高く売りたいんだけど、合わせざるを得ない。安くないと売れない。ヨーロッパのアカマツの価格が、日本の国内木材市場の価格に相当影響していますね。
森本氏 私も木材流通会社で営業として働いていたので、相場価格についてはよく分かります。一方、山で働く人の賃金は必ずしもそのような相場によって、上下するわけではないんです。その結果、そういう業界には人が集まらないので、山に関わる人はどんどん減ってきている状況なのかなと思います。そのあたりの議論っていうのは、もっと深めたいなと思っています。

パネルディスカッションのあとは、参加者の皆さんと質疑応答を行いました。その中で、「木材価値を高めるための仕組み」「CLTやLVLの活用」など、木造に関する国内外の注目すべきトピックスが語られました。
共創シンポジウムの閉会後は、登壇者と参加者の方々で交流サロンを行いました。パネルディスカッションや質疑応答の内容を深めながら、「これからの木造建築」はどうあるべきかを思い思いに話す場となりました。
弊社は今後もさまざまなテーマで共創シンポジウムを開催していきます。


【登壇者のご紹介(弊社除く)】
杉本洋文氏 株式会社計画環境建築代表取締役会長
長年に渡りRC造が主流だった時代から木造建築の可能性を追求してきた木造建築の第一人者。2004年から15年間、東海大学工学部建築学科教授を歴任。
森本達郎氏 森庄銘木産業株式会社取締役専務
林業活性化と循環型社会の実現を目指し、地域材の活用、人材育成といった社会活動にも貢献。木材業界の移り変わりを肌で感じられ感じながら、伝統技術と現代ニーズを融合させた経営を実践。現在は創業 100年を見据えた事業改革を推進し、未来の森をつくることを目指し、持続可能な林業経営・地域林業・木材産業の価値向上に注力。
前田 力氏 ナイス株式会社理事・一般社団法人日本WOOD.ALC 協会理事
建材住宅の専門商社ナイス株式会社の理事を務める。一般社団法人日本WOOD. ALC 協会の理事を兼任。木材と ALCの特性を組み合わせた乾式壁カーテンウォールの普及に尽力。従来の木造建築の課題であった耐火性能の向上、木質化促進の両立に尽力。
宮越久志氏 株式会社中東専務取締役
木造建築の技術革新、特に中大規模木造の分野で高い技術力を有する。石川県屈指の大型工場と高度な生産技術により、大断面集成剤や CLT の製造としては国内最大サイズの製造が可能。構造材として、石川県産材のスギや能登ヒバなどを積極的に活用し、国産材の利用拡大にも貢献。


