技術紹介

地域との対話から生まれた「あいさつロード」と「多世代の居場所」

豊中市立庄内さくら学園 豊中市庄内 コラボセンター「ショコラ」
2023年

計画

計画の背景

教育と地域サービスをつなぐ拠点づくり

豊中市庄内地区の学校は、建物の老朽化、少子化による各学校のクラス数の適正化といった教育課題解決のために、統廃合が進められてきた。まずは2020年、第六中学校と第十中学校が「庄内さくら学園中学校」に統合。そこに2023年庄内小学校、野田小学校、島田小学校の3校も統合し、小中学校が一緒になった義務教育学校として誕生したのがこの「庄内さくら学園」だ。敷地は、隣合っていた旧庄内小学校と旧第六中学校跡地。また同時に豊中市南部地域の公共サービス施設も統合し、「庄内コラボセンター」としてさくら学園の隣に建設する計画が進められた。コラボセンターには子育て支援センターほっぺ南部分室、市民公益活動支援センター、庄内保健センター、庄内図書館、こども・教育総合相談窓口、庄内出張所、豊中しごと・くらしセンター、庄内介護予防センターの各種施設が集められた。
 庄内地区は下町気質が残るコミュニティ豊かな地域。アーケード商店街が賑やかで、人のつながりや交流が活きている。子どもは地域のみんなで見守り育てていこうという意識が自然に生まれる土地柄だ。市の施設の一大改革であるが、統廃合にあたって小中学校と地域センターを隣接させ一体的に整備したところに特徴がある。

当初、学校と地域センターは別々に計画する予定であったが、設計者選定プロポーザルで一体化を提案し賛同を得た。一部ブリッジで接続しながら建物を一体的に計画する方法で、この地域にふさわしい新しい学校のあり方だ。
 この敷地に立地していた小学校と中学校の間には、「あいさつロード」という通りがあった。通学路であると同時に、地域の生活道路でもあり、大人と子どもが行き交いながらあいさつする道だ。これを踏襲し、あいさつロードを挟んで学校と地域センターをつなげることが、計画の中心であった。この道の位置を変更しつつ上部にブリッジを渡すことで、開発事業の手続きが必要となり、実現のために前面道路拡幅に必要な整備を進めてきた。

意匠

学校と地域センターを一体化する

地域が当事者となるワークショップ

庄内さくら学園と庄内コラボセンター、それぞれで運営関係者や地域住民が参加する計画・設計ワークショップを同時期に並行して行った。学校と地域センターの一体化を重視する考えは地域の考え方とも重なり、地域の見守り、子どもの居場所がスタディされていった。

2つの場をつなぐ「あいさつロード」は地域の界隈

学校と地域センターの間に設けた通学路兼地域の生活歩行者道である「あいさつロード」は、くらしの界隈を生み出す路地として計画している。普段から住民が行き交い、あいさつが交わされ、立ち止まり、会話が生まれる。まさに庄内地域のアーケード商店街と同じような場をイメージした。2つの建築はこのあいさつロードに向けて開いている。エントランスを対面させ、食堂や図書館など世代交流が期待できる両建物の機能をあいさつロードに面して配置することで、多様な交流を期待している。中の気配が伝わることで、行き交う人が日常的に見守ることができるのだ。
 路地としての界隈性を生み出すために、あいさつロードにはストリートファニチュアや植栽を配置し滞留を生み出すとともに、この路地界隈が地域全体に波及することを期待している。

立体的な界隈性を生む吹き抜けとテラス

さくら学園は各学年3~4クラスの全34クラス(2026年度)の大きな学校であり、いまも児童生徒数は増えている。将来的な児童生徒数の増加に対応するため全45クラス分の教室を確保している。クラスルームを南校舎の各階に配置し、北校舎には小アリーナと屋上プール、別棟で大アリーナを配置するのが基本構成。その上でオープンスペースを随所に設け、児童生徒が「集まる」場を積極的に生み出した。昇降口のエントランスホールは吹き抜けに大階段を配置。動線の要であると同時に、「交流スペース」として集まる場が形成されイベントなどに活用されている。3階と4階を吹き抜けている「オープンスペース」は高学年学級の動線に組み込まれ、テラスにも接続している。
 吹き抜けはコラボセンターの特徴でもある。1階から4階まで続く吹き抜けが各階をつなぎ、活動の気配を立体的に伝えている。吹き抜けは階ごとにセットバックさせ、斜めのボイドにすることで安全面にも配慮しながら、縦穴が立体的な界隈に変わる。
 クラスルームは廊下側の壁を稼働としてフレキシブルな利用を可能にするほか、部分的に廊下幅を拡げ「学年広場」を形成して学年のまとまりを生み出している。

またどちらの建築も、各階の全周をまわるテラスを設置した。室内活動が外に拡張した、立体的な路地にもなり得る場所だ。特に理科室、音楽室などの特別教室のテラスは幅を広くとってあり、教室の拡張的使用も視野に入れている。2つの建物の2階テラスはブリッジでつなぎ、連携した運用の可能性を生み出した。
 またテラスは建物全周を外部でつなぐ避難動線となり、日射遮蔽に効果があり、台風時の飛来物のガードにもなる。建物を外部に開きつつ、守るべきものを守っている。

構造

有機的につながる
多様な空間を実現する構造計画

本施設は、世代を超えたつながりや交流を生み出す多様な用途の空間を有機的につないでいる。また、災害時には防災拠点としての役割も合わせもつ。この多様な空間性、機能性、耐震性を満足させる構造計画が課題となった。
 この建築は、学校(南校舎、北校舎)、地域センター(庄内コラボセンター)、アリーナの4つの棟がエキスパンションジョイントでつながり、一体となっている。各棟で求められる空間の特性や用途に応じた荷重条件に違いがある。そのため、4つの施設を空間=スパン寸法、建物荷重という軸で整理したうえで、各棟に共通あるいは個別の仕様・工夫で構造計画を立案していった。
 本施設は、災害時には防災拠点としての役割も合わせもっているため、大地震後も建物の機能性が維持出来るように、建築基準法の1.25倍の耐震性能を確保した。

南校舎:開放的な学び場を実現する「やわらかい壁」

南校舎の東西方向については、教室モジュールを基本とした8.4mの均等スパンが並ぶ。張間方向(南北)は、教室間の間仕切壁を耐震壁とすることで、機能性・耐震性に整合する耐震壁付ラーメン架構とした。一方で桁行方向(東西)の長い壁は、機能上は不要なため、「縦長の短い壁」を「やわらかい壁」と呼び、耐震要素として活用した。剛強な横長の壁に対し、縦長の壁は柱梁のみのフレームと地震時の挙動が類似するため、協働して地震に抵抗することが可能となる。このやわらかい壁が建物の芯棒のように機能することで、特定箇所への応力集中を避け、開放的な学びの場と高い耐震性能の両立を実現した。

北校舎:ロングスパン+重荷重を支えるPC梁

北校舎は南校舎と異なり、ロングスパンの体育館の上階に重量の重いプールを積層する構成である。そのため、他の棟よりも耐震壁を増やすことで、大空間による剛性低下を補い、上階の大きな重量を支える強度を確保した。また、プール直下の大梁には高強度のPC鋼線を配筋した「PC梁(現場緊張)」を採用した。これにより、重い荷重によるひび割れ制御(パーシャルプレストレス設計)を行いながら梁成を抑制し、合理的な架構を実現した。

コラボセンター:コの字型フレームによって界隈感を実現

本建物は、各階で不均等にセットバックした段丘状の形状と、学校や地域に対して大きく開いたプランが特徴である。この建築計画の自由度を高めながら地震時に生じる建物の変形を制御するため、外周部のフレームを強化する方針とした。 具体的には、外周の柱梁フレームに二次壁(そで壁)を付加・一体化させることにより、開口部の開放性を保ちながらフレームの剛性・耐力を高める計画とした。また、建物全体を「コの字型フレーム」を連続させることで固め、外部に開きながらも建物はねじれにくい架構とした。

大アリーナ:施工性と耐震性を両立する屋根架構

31m×40mの大空間を実現するために、大アリーナの屋根架構には、施工性と耐震性能を両立できる、立体トラスを採用した。本建物の工事では各施設の施工が同時並行で進むため、大型重機の搬入や広大な地組みスペースの確保が困難であった。そこで運搬可能なサイズに分割して搬入することが可能な「小部材で構成した立体トラス工法」を採用。ステージ上で組み立てることで、大型重機に頼らない合理的な施工を実現した。また、屋根の軽量化により下部RC躯体への地震力を大幅に低減し、大空間建築としての構造安全性を高めている。

設備

建屋内外の快適環境の形成

吹き抜けの熱環境

コラボセンターの吹き抜けはセットバックしながらも、1階から4階までつながっている。この吹き抜けに面した空間は、子どもたちの活発な活動の場としていくため、過ごしやすい環境を計画した。吹き抜け空間は、冬には暖気が上昇し、上階と下階で温度差が生まれる。そこで、3階と4階の廊下の天井にエアスウィングファンを設置して暖気の還流を促進した。

外環境の整備

コラボセンター入口脇には、あいさつロードに面して夏期にミストを噴霧するクールスポットをつくっている。軒天に4mの噴霧ノズルヘッダーを2本設置した。夏には、子どもたちがクールスポットで走り回る姿を見ることができ、あいさつロードの賑わいを生み出している。
 また軒下やローポールに照明を設置して、見守りの死角となる暗がりが生まれないようにしている。同時に照明は、あいさつロードだけでなく、段丘のようなテラスを明るく浮かび上がらせ、まちの拠点として夜間でも地域を照らすことを意識している。
 大アリーナは災害時の避難所として想定されている。コラボセンターとの間にマンホールトイレを5基設置できる接続口を設置。地下には屋根から集水した雨水を濾過して溜める貯留槽を設置している。またさくら学園屋上プールの水は1階の採水口から消防用水として利用できる計画とした。

写真
メインビジュアル:新建築社写真部, 4–7, 9–11:菅原康太

建築概要

用途
学校、図書館、公民館、児童福祉施設 他
建主
豊中市長
延床面積
30,094.72㎡
階数
地上4階
構造
RC造・一部S造、PC造
受賞歴
2023グッドデザイン賞[学校・複合公共施設]

設計者

  • 喜田 育樹

    きだ・なるき

    執行役員 大阪設計室/ディレクター統括部長

    1973 年京都府生まれ。1996 年近畿大学理工学部建築学科卒業。同年類設計室入社。

    1973 年京都府生まれ。1996 年近畿大学理工学部建築学科卒業。同年類設計室入社。

  • 小熊 耕平

    おぐま・こうへい

    大阪設計室 ディレクター

    1986年福島県生まれ。2011年秋田県立大学大学院システム科学技術学部建築環境システム修了。同年類設計室入社。

    1986年福島県生まれ。2011年秋田県立大学大学院システム科学技術学部建築環境システム修了。同年類設計室入社。

  • 田宮昌明

    たみや・まさあき

    大阪設計室 意匠設計部 課長

    1968年兵庫県生まれ。1990年京都工芸繊維大学工芸学部 住環境学科卒業。同年類設計室入社。

    1968年兵庫県生まれ。1990年京都工芸繊維大学工芸学部 住環境学科卒業。同年類設計室入社。

  • 千葉大生

    ちば・たいせい

    大阪設計室 意匠設計部 主任

    1990年宮城県生まれ。2015年宮城大学大学院事業構想学研究科修了。同年類設計室入社。

    1990年宮城県生まれ。2015年宮城大学大学院事業構想学研究科修了。同年類設計室入社。

  • 加藤弘行

    かとう・ひろゆき

    大阪設計室 構造設計部 課長

    1977年千葉県生まれ。2003年東京都立大学大学院工学研究科建築学専攻。同年類設計室入社。

    1977年千葉県生まれ。2003年東京都立大学大学院工学研究科建築学専攻。同年類設計室入社。

  • 鈴木邦彦

    すずき・くにひこ

    大阪設計室 設備設計部 課長

    1981年千葉県生まれ。2004年千葉大学工学部情報画像工学科卒業。同年類設計室入社。

    1981年千葉県生まれ。2004年千葉大学工学部情報画像工学科卒業。同年類設計室入社。

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