部門間の一体感を高め、組織連携と創造性を高める

HORIBA BIWAKO E-HARBOR
2015年

戦略パートナーとして、企業の先端課題に応える

HORIBAグループは、世界に約50のグループ会社を持ち、グローバルに分析・計測システムを提供するリーディング・カンパニーです。その社是は「おもしろおかしく」であり、『人生の一番良い時期を過ごす「会社での日常」をエキサイティングなものに』という創業者である堀場雅夫氏の哲学が由来となっています。この哲学のもとで、高い技術を世界に発信する「港」をイメージして完成したのがHORIBA BIWAKO E-HARBORです。

 

そして、本事業における類設計室の建設プロジェクトの推進は、この哲学から派生した、時々の社会外圧に応える経営戦略や企業戦略を、客先と同じ目線でとらえることに注力し、さらに、研究や生産の具体的な中身まで深く把握していくことが大切でした。それを、建築に翻訳し、新しいシステムを提案していく。これが、戦略パートナーとして、企業の先端課題に応えていくことにつながっています

建設プロジェクトを通じて、次世代のリーダーを育成する「技術の遷宮」

プロジェクトのスタート時には、ベンチャー企業時代から60年培ってきた技術をどのように伝承するのかが事業の軸として据えられていました。

 

堀場製作所様の技術を作り上げてきた先人たちは、その原理まで深く理解していましたが、それが完成してから入社した人材は、新たな技術の開発に必要な原理の理解を、先人たちの理解まで追いつくことが求められていました。

 

そこで、それまでは吉祥院に構えていた本社のコア技術部門を中心に、びわこ工場へあえて移転させることにしました。これにより、次世代の社員が一から新施設の立ち上げを担うことになり、本事業は、原理の理解を深め技術を伝承していく『技術の遷宮』として位置づけられることになりました。

 

そこで、完成後の工場を担っていく若手メンバーでプロジェクトチームを組み、彼らに堀場製作所のトップが自ら事業に掛ける想いを伝えることからはじめました。その想いを受け、堀場製作所チームと類設計室の設計チームが一体となって、未来の生産施設をどう再編するのかを互いの専門領域を越えて議論し、世界での競争力をさらに高める新しい施設を作りあげていきました。

部門の一体感を生みだす スカイアトリウムとワンルームオフィス

7層を吹抜けでつないだスカイアトリウムは、社員の日常動線となり、びわこをのぞむ雄大な自然を前に、「人と人」と「人と自然」が共感しながら五感をフルに働かせ、知識を知恵に変え、研究開発・生産の高度化を支えていく空間としています。

ここでは、研究や生産の場での「ONの仕事状態」とは異なる「OFFの仕事状態」での思考の活性化を行えるように、カウンターテーブルやソファーが配置されています。そこでは、部門を越えた会話が日常的に行われ、社員の一体感の醸成と、自然や他部のメンバーからの刺激で、行き詰った際の発想の転換を促す場になっています。

 

これらの空間は、複数の部門が一体となったワンルームオフィスやワンルームファクトリーとつながっており、部門間の一体化を図っています。また、複数部門のトップは自部門のスペースとは関係なく、フロアの中央に集約されています。そこに担当者が報告にくると、他部門のトップも内容を把握でき、他部門との調整もその場で行うことができ、問題解決のスピードアップを可能にします。

「見せる工場」として、来訪者との企業姿勢の共感をはかり、社員の活力・高度技術への信頼性を高める

堀場製作所各施設では、「見せる工場」というコンセプトで貫かれており、どのようなルートで見学していただくかを盛り込んだ設計になっています。この施設では、2024年末までに28,000人の方々が来訪されました。

生産施設は、共用部のスカイアトリウムからガラスを通して見学できるようになっており、より詳しい内容は、工場内に入って見学もできるようになっています。さらに、工場内には、生産の担当者が、顧客などの見学者に対して、技術内容を自ら説明するスペースを設けられており、このような企業姿勢を来訪者が共感できる場になっています。

工場を見ながら技術内容を説明できるスペース

この技術の高さのアピールの場により、顧客に大きな信頼感を与えることができます。また、工場内には担当者が技術内容を自ら説明するスペースを設けています。BtoBの会社でよく見られる「生産者がユーザーの反応を知る機会がない」という問題を解消し、自ら顧客と直接対話できることで、相手からの評価も体感できるようになり、仕事のやりがいが実感できるようになっています。

これからも、生涯にわたる戦略パートナーとして

設計段階の生産スペースコンセプトは、市場変化に対応するフリーレイアウト・ワンルームファクトリーとしていました。そして、竣工以降も、市場変化からくる戦略的な新技術の導入決定が行われ、それに対応する様々な改修設計を続け、現在も進行中です。これは、仕事とは顧客との生涯にわたる戦略パートナーとなることだと捉え、竣工後も連続的に関わっています。

建築概要

用途
事務所・工場
延床面積
27,576.54㎡
構造
S造
階数
地上10階

設計者

  • 本田 真吾

    ほんだ・しんご

    大阪設計室 執行役員/統括ディレクター

    1982年京都工芸繊維大学工芸学部卒業、同年類設計室入社

    1982年京都工芸繊維大学工芸学部卒業、同年類設計室入社

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  • 研究施設・生産施設・物流施設
  • 人材が活性する働く場
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